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ビジネスお役立ちコラム~【経営改革実践講座】CSへの大いなる勘違いについて~解決バンク

【経営改革実践講座】CSへの大いなる勘違いについて
【間抜けなコンサルタントでしょうか?】

かつて森前首相が「IT、IT」と連呼していた時期があった。

記者会見でも国会でも原稿棒読みしかできない首相であったから、ご本人はITのことなど何も分からず叫んでいたのであろう。その証拠に、記者会見の席で「IT」を「IC」と言い続け、たまりかねた記者から「首相、ITじゃないんですか?」と注意される失態を演じたこともあった。こんなレベルの人がITを推進しようとしても上手く行くはずもなく、日本のITは韓国に遠く遅れを取る現状となっている。

さて、森さんならば知ったかぶりがバレても恥をかくだけだし、いざとなれば辞職・解散という手もあるが、世の社長さん方の場合はそうは行かない。知ったかぶりでお茶を濁すだけでは経営に影響も出ようし、そもそも逃げるわけには行かないのである。

前々回のコラムでは、日本の経済力が後退した理由として3つのビジネス能力の欠如をあげた。いずれも大きな問題ではあるが、意欲さえあれば、能力不足は学習によって補うことができる。日本全体では時間も掛かろうが、一つの会社ならば短期間での向上も可能であろう。その原動力となるのは、何はさておき社長さん本人の知識欲なのである。そこで今回は少々お勉強をしてみよう。「マーケティング能力の不足」のところで触れた「CS」を題材に、意識改革の必要性を語ってみたいと思う。

まずは私が経験した以下の会話をお読みいただきたい。
社長
「いやー、このところ売上が減って困ってるのよ。それで経費削減やらリストラやらしなくちゃいけないんだけど、なかなか上手く行かなくてね。だって、何でも減らせばイイってものじゃないでしょ?」

「社長、CSをご存知ですか?」
社長
「‥‥CS?‥‥知ってるよ、顧客満足だろ。でも今はそんな余裕はないんだよ」

会話はここで途切れてしまったのであるが、お読みの皆さんはどう思われたであろうか。間抜けなコンサルタントだと思ったか、それとも社長の認識が誤りなのか‥‥。
【「CS」と「顧客満足」は別物である】

CSが「Customer
Satisfaction」であり「顧客満足」と一般的には呼ばれていることはご存知であろう。この言葉が日本に普及したのは1995年頃。当時は書店のビジネス書のコーナーにたくさんのCS関連の本が並んでいた。つまり、ここ日本でも一時は流行した理論なのであるが、その後は確たる認知もないままに、単なる言葉、あるいは漠然とした概念として社会に定着してしまったようである。

しかし、この「CS」という考え方、決して一過性の流行のようなものではない。マーケティングの基本中の基本であり、「究極」あるいは「万能」とまで言われている“理論”なのである。

ところが、それほど大切な考え方であるにも関わらず、日本ではその本質が正しく理解されていないというのが実情である。

何故、日本ではCSが正しく理解されていないのか。その原因は「CS」を「顧客満足」と訳してしまうことにある。

日本においては「顧客満足」という考え方はアメリカ建国以前、江戸時代の中頃から存在している。日本人にとって「お客様は神様です」は昔から商いの基本なのである。

一方「CS」は1980年代の終わり頃、アメリカで、予算の効率的な使い方を探る過程で発見・確立された「理論」なのである。

こう書けば、日本人の身に染み付いている「顧客満足」の概念と「CS理論」が別物であると言うのがお分かりいただけるであろう。

別物というだけではない。前述した様に、CSは本来「効率論」であり、費用や手間を減らすためのものなのである。しかし多くの日本人が考える「顧客満足」は「もっとお客様に満足していただく」であるから、実行すれば費用や手間が今以上に掛かってしまう。つまり「CS」と「顧客満足」はイコールどころではなく、ある意味においては正反対の考え方なのである。

ここで前述の社長と私の会話を思い出していただきたい。経費削減やリストラの方法に悩む社長にとって、効率論である「CS」こそ、真っ先に活用すべき理論なのである。にも関わらず「CS=顧客満足=費用や手間が掛かる」と早合点してしまうから「余裕がないからCSどころじゃない」という発言になってしまう。その結果、有効な策が見出せないまま、社長は一人悩み続けることになるのである。

CSは「お客様に満足していただこう」という標語ではない。極めて実践的で、余裕のない会社にこそ有効な「理論」なのである。
【謙虚な学習意欲なくして能力の向上なし】

ITの時代だからとホームページを作成したが、効果はゼロで経費が掛かっただけという会社は実に多い。こうした会社はITのIが「インターネット」のIになってしまっている。

CSも同様。多くの経営者の頭の中では、CSのSが「サティスファクション」ではなく「サービス」のSになってしまっている。しかし、ここまでを読んで、CSが“余裕がない会社にこそ有効な効率論”だと正しく認識されれば、早速本を買って読んでみようという気にもなるだろう。その意欲を阻害していたものは何なのか‥‥言うまでもなく「CS=顧客満足」という固定観念なのである。
念のため申し添えておこう。CS関連の書籍はあまたあるが、前述の「そもそもCSとは」について書かれている本はほとんどない。この認識なしに、本に書かれている戦術をそのまま真似してしまうと、やはり経費や手間が増えてしまう結果になりやすい。ご注意を。

ともあれ「IT」も「eコマース」も、テレビのコマーシャルなどから発信される情報は、システムを売らんがためのごく表面的なイメージでしかない。しかしその本質は現代の経営にとって不可欠の知識なのである。「BtoB」も「BtoC」も、そして「CS」も同様。表面的な雰囲気だけで分かったような気になってしまえば、能力向上の機会は永遠に失われてしまうのである。

IT、CSといった外来の言葉に限らず、効果的な考え方・ツール・人材・アイデアといったものは、実は身の回りにたくさん存在している。それをキャッチできなくしてしまうのが「そんなこと分かっているよ」という固定観念なのである。知識習得に対する謙虚な姿勢なくしてはビジネス能力の向上は望めないのである。

世の中はかつてないスピードで変化している。その中で、分かったような気になって重要な事を見過ごす、あるいは新しい考え方の導入に躊躇するといった行為は、経営上の致命傷ともなりかねない。

謙虚な姿勢と冷静で広い視野から得られる知識こそが、社長さんにとって何よりの武器になるのである。パソコンやインターネットなら社員に代行させられる。しかし社長さんの頭の中を代行できる人はこの世に存在しないのである。

このコラムは平成14年「企業情報」に掲載されたものです。
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