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【経営改革実践講座】中小企業の「強み」について

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【経営改革実践講座】中小企業の「強み」について解決バンク

 

【私、怒ってます!】

 はなはだ不本意ながら、このところつらい日々が続いている。

 かつて私が通い、現在は我が子が通う市立の小学校の南側に隣接して、15階・高さ45メートル・幅150メートルのマンションが建設されることになった。
 建設されれば冬の午前中は小学校の校庭にほとんど陽が射さなくなってしまう。
 かなり強いビル風が、罪もない児童の小さな体に吹き付けることにもなるだろう。

 当然、反対運動が持ち上がったが、何の因果か、これまでPTAには一切顔を出さなかった私が、その「緊急対策委員会」なるものの委員長になってしまった。
 理由は明白。
 「いつも家に居るヒマそうな人」だと思われたからである。

 まあ、こうした倫理のかけらもない悪徳業者と闘うのは望むところと、成り行き上、気軽に引き受けてしまったのだが、この考えが大いに甘かった。
 外出嫌い、電話嫌いの私が、連日あちこちの会議に深夜まで引っ張り出され、電話・FAXは鳴り止む事がない。
 それだけならまだしも、PTAという集団にありがちな身内の攻撃や疑惑の目にさらされることもあり、心の休まる間とてない日々を過ごしているのである。

 ともあれ、全ての原因は、こうした環境破壊を生業としている業者、それを助長する金権政治、そして住民無視で事なかれ主義の行政にある。
 運動の中心に位置したおかげで、個人の利益のために既存の献金構造を変えたくない政治家とゼネコン業者の結びつきをまざまと見ることになった。
 こうした従来型の腐敗した構造は、遅かれ早かれ崩壊するには違いない。
 世の中の変革が圧倒的民意によってしかもたらされないと言うことは世界の歴史からも明らかなのであるから。
 今はその日が一日も早く来ることを願うばかりである。

 こんな憤りの日々を送っていたら、今度は長野で田中知事の不信任案決議騒動。
 反田中知事の最大派閥の長なる輩がテレビに出演していたが、子孫に伝えるべき自然の破壊と引き換えに私利を得ることを当然のごとく主張する厚顔無恥のコメントにはほとほとあきれてしまった。
 郵政民営化に反発する荒井という小物政治家にも同様に腹が立つ。
 環境破壊や建築物や規制に関する紛争、つまり既存の集金システム対民意の抗争は、今や日本のありとあらゆるところで起きている出来事なのである。

 

【こんな会社が淘汰される】

 このコラムは政治談義ではないのでそろそろ話を本題に戻さなくてはお叱りを受けよう。
 もちろんここまでの話は今回のテーマに関わる問題提起である。

 前述したような数多くの問題は、既得権益を必死に守ろうとする人たちの行動が、自然な水の流れに逆らうようなものであるからこそ無理が生じ、その結果、紛争にまで発展してしまう。
 当事者たちは、既得権益の構造がもはや風前の灯火だということを肌で感じているのである。あたかも多くの企業が、「このままではいけない」と漠然とした不安を感を抱くのと同様に。
 こうした行為が国益に著しく反する事を承知し、既得権益を生み出す構造が、遅かれ早かれ確実に崩壊すると知っているからこそ必死に抵抗し、無理押しをするのである。

 このことは、日々の会社経営にもあてはまる。
 つまり、この激動の社会の中にあって、収益の構造や会社の体制が何年間も変わらぬままで経営を成り立たせようとする事自体が無理な考えなのである。 
 そうした会社は、たとえ今は何とかなっているように見えても、実は経営危機の状況が身近に迫っている可能性が非常に高いと言わざるを得ない。

 関東地区のある大きな組合の会合に時折出席するが、何十年も前からの得意先と業者で構成されたこの組合では、昨今、倒産・廃業する会社が後を絶たない。
 社長さんたちとお話をさせていただくと、一様に「経営が苦しい、何とかしなくては‥‥」と口にはするが、やることと言えば、何とか従来の体制のままで少しでも会社を存続させようと、お得意様のご機嫌伺いの会合に出席するばかり。
 こうした例は皆さんの身近にも枚挙に暇ないことであろう。

 では、脱既得権益、脱淘汰組となるためにはどのような意識が必要なのであろうか。

 

【ウチみたいな田舎の中小企業が‥‥】

 実際のコンサルティングの現場でこんなことがあった。

 人件費の負担軽減が最大の課題である会社に対し、固定給から能力給または歩合給への移行を提案した。
 ごくごく当然の提案である。
 ところがその提案を聞いた社長、渋い顔をするばかりで返事をしない。つい数分前まで「人件費を削減したい」と自らが何度も口にしていたにもかかわらずである。
 沈黙の後、ようやく口にした言葉が、
 「ウチみたいな田舎の中小企業にはまだ早すぎるんじゃないかな」

 丁度、その前日、経営状態が安定していることで知られる一部上場企業Y社に勤務している親友から、Y社が来年から全社員例外なく年俸制に移行するとの発表が突然あったという話を聞いた。
 従業員1万8千人の企業であるから、全社員を年俸制に移行するにあたっては、人事評価システムの構築は勿論のこと、給与明細やソフトの変更だけでも数千万円の費用が掛かるであろう。
 一部上場の優良企業であっても、固定給からの脱却を急がなければ経営が成り立たないと見るや、多額の費用を掛けてでも年俸制への移行を急いで行うのである。
 それを「田舎の中小企業にはまだ早い」では全く話にならない。

 その会社の従業員は23人。1万8千人のY社と比べれば、年俸制への移行に掛かる労力や費用など無に等しい。
 Y社では、発表にあたって、社長からのビデオレターを1000本用意したというが、従業員23人の会社なら、翌朝にでも社長が従業員を集めて宣言すればそれでおしまい。
 給与計算だって、経理部長は社長の奥さんなのだからシステム変更に費用が掛かることも無い。
 会社の規模が小さければ変革に対するリスクも小さくて済むのである。

 中小企業は相撲で例えれば小兵力士。舞の海が曙と四つに組んでは勝負にならない。動きを止めれば電車道で押し出されるのは自明の理であり、丸い土俵を動き回るからこそ勝機が見出せるのである。
 大型トラックが曲がり角で立ち往生するのを尻目にバイクで軽快にすり抜けるような、はたまた大型車両が進入できない道をスイスイ通り抜けて行くような「身軽さ」……これこそが中小企業の唯一の強みであり、これを生かさずしてに存続の道はあり得ないということを強く認識すべきであろう。

 既存の収益構造などもはや風前の灯火なのである。
 そんなものにしがみつき、動きを止めてしまうのは俎板の鯉と同じ。
 「2~3年前は大昔」という今の時代こそ、「身軽さ」は何よりの武器になろう。

 前出の従業員23人の会社は、歩合給に移行した際に6人が会社を辞めた。
 残った17人の給料は上がり、23人の時よりも売上は増えている。
 今では社長は、「何故もっと早くこうしなかったんだろう?」と不思議そうな顔で言うのである。

(了)



このコラムは平成14年「企業情報」に掲載されたものです。
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