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■ビジネスお役立ちコラム

【経営改革実践講座】  1、認識の大いなる甘さについて

[中小企業専門のコンサルタントです]

 関東生まれの関東育ち、鳥取は勿論のこと、兵庫以西には1人の親戚も知人も居ない私が当誌に一文を連載することになった。丁度、別の連載が終わったところに、かつて原稿を書いたことのある会社を通じて話があり、喜んで了承した次第である。ひとえに縁であるとしか言い様がない。
 編集担当者からは「経営者である読者の皆様に、朝礼の訓示の如き一喝を」とのリクエストであるが、元より非才の身に加え、普段の文章はデス・マス調、「ダ・デアル調」の文章自体を偉そうに感じてしまう私としては、いささか気恥ずかしい思いもある。とは言え街角でバッタリ会ってお叱りを被ることもなかろうし、親戚に苦情が持ち込まれる心配もあるまいということで、普段どうり、仕事で社長さんに物申す時と同様、遠慮なしに書かせていただこうと思っている。
 さて、冗談はさておき、私の事を全く知らないほとんどの方のために、まずは自己紹介から始めよう。
 個人としての肩書きはマーケティングプランナー、ファイナンシャルプランナー(もう一つ“書家”というのもある)。どちらも一般にはあまり馴染みのない職業であるが、二つを同時に行うというのはさらに珍しい。この二つの知識と経験を結合させた経営コンサルティングが私の生業である。大前研一さんのマッキンゼーなどは世界的にも有名であるが、日本の中小企業にとっては、経営コンサルタントなどというものは、ごくごく縁遠い存在である場合がほとんどであろう。
 ところが私の場合、お客様はすべて中小企業。大企業からは仕事が来ないから当然だと言う声もあるが、新たな仕事先はすべて過去のお客様からのご紹介で、宣伝らしいことをせずとも仕事の途切れる様子もない。セミナーなども頻繁にやらせてただいている。と言うことは、コンサルティングの効果はきちんとあがっているのであろう。その自負は多分にある。

 [“愚痴”の集積所]

 もちろん自信の根拠はそれなりにあって、それは私のコンサルティングの手法が従来とは異なり、中小企業用に実効性と即効性を重視して組み立てられたものだからである。
 通常のコンサルタントの場合は“会社の状況”を調べる。ところが私の場合は、まず“経営者の一週間の行動”を徹底的に調べる。一日中社長の後をついて歩くこともあり、社長が私の事をきちんと紹介しなかったせいで、社員からは新しい秘書と勘違いされたこともあった。
 その上で、経営者個人の業務を整理することからコンサルティングはスタートする。
 理由は簡単。ほとんどの中小企業にとって、経営者は最高の営業マンであり、最高の企画マンであり、財務の最高責任者である。ところが中小企業の経営者は忙しい。社内の人員も限られているし、安心して任せられるエキスパートも少ない。社外のブレーンを使うには相応の費用が掛かる。すると必然的に業務は経営者に集中してしまう。大事な仕事も雑用も、各方面とのお付き合いなどもすべて同時にこなさなければならないのが中小企業の経営者である。その結果として事業計画に直結した業務へのパワーが半減されてしまう。よって、経営者の多忙な業務を整理、軽減するだけでも経営に大いなるプラスをもたらすことは明らかなのである。
 さらにこの手法の場合、経営者自身が納得して実行できるため、すぐに、しかも喜んで施策に着手していただける。だから即効性も実効性も高まるのである。他のコンサルタントは、経営者から「それなら自分でやってみろ!」としばしば怒鳴られるらしいが、おかげさまで私にはそうした経験はない。
 さて、何故私の仕事の話を長々としたのかと言えば、私のコンサルティングが経営者本人への徹底的なヒヤリングという手法ゆえ、好むと好まざるとに関わらず、経営者の皆様からイヤというほどたくさんの愚痴を聞かされる。言わば“愚痴の集積所”なのである。従って、世の経営者の抱える悩みについては滅法詳しい。同時に、経営不振の会社の経営者にありがちな傾向、弱みや欠点についても熟知している。そうした経験を生かし、この「経営意識改革実践講座」では、経営が上手く行かない会社の経営者にありがちな誤解や認識の甘さを指摘し、今後の意識改革の指標としていただきたいと思っているのである。

 [景気は本当に悪いのか]

 と言うことで、まずは遠慮なしに最も重要かつ基本的なことをはっきりと申し上げよう。
 経営が上手く行っていない会社の経営者と話をしていて強く感じられること、それは「現状認識の大いなる甘さ」である。
 例えばここ数年、経営者の口から最も多く出る愚痴が「景気が悪い」「景気が少しは良くなってくれないと……」。
 この言葉を口にしてしまう経営者の認識は大甘と言わざるを得ないし、概ね経営状態もよろしくない。
 断言しよう。景気は良くはならない。仮に今より少しは良く見える状況となったとしても、それは過去及び現在とは全く違う“別ステージ”であって、変化に対応する行動もなく、現状のままで何とか生きのびたという会社の居場所は、もはやその時には存在しない。言い方を変えれば、景気が良くなった世界においては、淘汰のスピードは今よりはるかに加速しているのである。
 この文章をお読みの方々の中にも「景気が悪い」を口にしたことのある方は数多くいらっしゃることだろう。コンサルティングの現場で「景気が悪い」の言葉が出ると、私は以下のような質問をする。皆さんも実際に質問されたと仮定して答えていただきたい。
 
「それでは、どのような状態を“景気が良い”と言うのですか?」
 さて、ご返答はいかがなものであろうか?
 これは単なるイヤミなどではなく、具体的な対策を導き出すための質問である。例えば「現状の設備と人員で、売上ベースで5年前の数値の状態」と答えが返って来れば、施策の策定へと話を進めて行くことができる。
 ところがほとんどの場合、こうはならない。
「どのような状態って言われたって……」のような、あいまいな言葉しか返って来ないケースが大半なのである。
 景気が悪いとの言葉が蔓延してはいても、海外旅行者は過去最高を記録し、海外高級ブランドにとって日本は最大のマーケットであり、中学生までが携帯電話を持ち歩き、贅肉を取るための低周波健康器具が馬鹿売れしている。さらに統計によれば、景気動向が経営に直接的な影響を及ぼす経営規模というものがあって、日本においてはマツダの規模以上という数値も出ている。
 さて、これでも景気が悪いことが経営不振の理由と言えるであろうか。
 景気は悪いのではない。正常な状態に向かって急激に変化しているのであるというのが正しい認識。そのことを認識できず、経営の不振を景気のせいにすることは責任転嫁以外の何物でもなかろう。
 残念ながらこうした認識の誤りや、もはや通用しない過去の固定概念にとらわれた経営姿勢は非常に多く見受けられる。以降もその具体例を提示し、激動の時代を生き抜くための経営意識の改革に寄与して行きたいと切に願う次第である。どうぞお楽しみに。

このコラムは平成14年「企業情報」に掲載されたものです。
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